JROリサイタル96曲目解説1st Stage 1. Orange Sherbet 作曲、編曲:Sammy Nestico ミュートトランペットとフルートの組み合わせにトロンボーンとバリトン サックスを配したテーマ、そして中間部の分厚いサックスソリが魅力的な 曲で伝統的なベイシースウィングを基本にモダンなアレンジが施されてい る。学生バンドやアマチュアバンドでも親しまれている曲で昔ビッグバン ドをやっていた人には懐かしいと思う1曲かも。 2. You Stepped out Of The Dream 作曲:Nacio Herb Brown 編曲:Dave Wolpe 邦題は「夢から醒めて」。ジェームズ・スチュワートとジュディ・ガーラン ドが主演した41年の映画 "Ziegfeld Girl" (邦題:美人劇場)の中の 曲。Wolpeのアレンジはサンバとスウィングのリズムが交互に現れ、親し みやすいアレンジとなっている。 3. Liberty City 作曲、編曲:Jaco Pastorius "Liberty City" とはマイアミ市の黒人居住区の名前でカリブ的な色彩感 が豊かな曲。ジャコの "Word Of Mouth Bigband" はランディ・ブレッカ ーやボブ・ミンツァー、ピーター・アースキンなど80年代を代表するミ ュージシャンが名を連ね、野生的でグルーヴ感あふれる演奏が売り。 4. Switch In Time 作曲、編曲:Sammy Nestico アマチュアビッグバンドのバイブルともいわれるアルバム "Basie Straight Ahead" の中の曲でスウィンギーなアップテンポの曲。このアル バムは後期ベイシーの座付きアレンジャーのサミー・ネスティコが初めて 全曲を書いた。ネスティコはこれ以降ベイシーが没する84年までのパブ ロレーベル時代のアレンジを手がけた。 5. It's Oh So Nice 作曲、編曲:Sammy Nestico Switch In Timeと同じく "Basie Straight Ahead" の中の1曲。こちらは ミディアムスウィングでゆったりとグルーヴする。中間部のトロンボーン ソロが魅惑の世界へといざなう。 6. I Wish You'll Be Happy 作曲:川村結花 編曲:Slide Hampton スーパーアイドルグループ「SMAP」のアルバム「005」からのナン バーで原題は「ギョーカイ地獄いちどはおいで」。元のアレンジはコルゲ ンこと鈴木宏昌でストリングスとビッグバンドによる重厚なサウンド。 今回演奏するバージョンはアルバム "Smappies -Rhythmsticks-" に収録さ れており、演奏はバンガードジャズオーケストラ(かつてのサド=メルオ ーケストラ)によるものでSMAPのヴォーカルは入っていない。SMA Pのここ数枚のアルバムには著名ミュージシャンが顔を連ね、さながらG RPか何かの企画ものアルバムの様。われわれとしてはなんとも羨ましい 限りである。 7. Quietude 作曲、編曲:Thad Jones ミディアムライトスウィングのきれいなバラード。サックスの絨毯の上を フリューゲルホルンが歩き、叙情的なピアノソロの後はカウント・ベイシ ーをより一層モダンにしたようなホーンアンサンブルがありエンディング のテーマへと導いていく。サド=メルオーケストラは65年に結成され、 60年代半ばのジャズシーンの不況の中仕事がない優れたテクニックを持 つミュージシャンが集まった。 8. Ya Gotta Try 作曲、編曲:Sammy Nestico バディ・リッチによる演奏は77年録音 "Buddy Rich Plays and Plays And Plays" が初テイク。元々はカウントベイシーオーケストラのために サミー・ネスティコが1970年に書いた曲だがベイシーによるアップテ ンポの演奏に対してバディ・リッチの演奏はさらに速くベリーファスト。 デモテープのバージョンは原信夫とシャープス&フラッツとのジョイント コンサートのもので前述のものよりさらに速い。さてJROの演奏はどの 速さになるのか…。 2nd Stage 9. Art Of The Bigband 作曲、編曲:Bob Mintzer イエロージャケッツなどで活躍中のテナー奏者、ボブ・ミンツァーの91 年録音のDMPレーベル5枚目の作品。サックスソロと繊細なアンサンブ ルはまさにビッグバンドの芸術。ボブ・ミンツァーはプレーヤーや作編曲 家としてばかりではなく、指導者としても才能を発揮しており、各方面の クリニックやレクチャーなどを精力的に行っている。 10. Moonlight Serenade 作曲:Glenn Miller 編曲:Bob Mintzer 映画「グレンミラー物語」でもおなじみの名作を同じくボブミンツァーが ボサノバ調にアレンジした作品。大胆なリハーモナイズで優雅な原曲が更 に美しい曲に生まれ変わっている。また中間部にアフロっぽいフレーズも 埋め込まれ、変化に富んだ曲となっている。 11. Snakes 作曲:Marcus Miller 編曲:Mark Taylor アルト奏者デヴィッドサンボーンのナンバーで故マイルスデイヴィスの愛 弟子、マーカスミラーの作曲。デヴィッドサンボーンは最近ではNHKの 連続ドラマ「ひまわり」のテーマ曲を山下達郎とともに手がけている。 12. Especially For You 作曲、編曲:John Oddo ウディハーマンオーケストラのナンバーで作曲はピアノのジョン・オッド。 ジョン・オッドはハーマン晩年期のナンバーの作編曲を手がけており、フ ァンキーなナンバーを数多く発表している。"Especially For You" はそ の中のしっとりとしたバラード曲 13. KOIKE-YA Samba 作曲、編曲:小池修 数原晋率いる東京アンサンブルラボのナンバー。曲名は作曲者の小池修に ちなんでつけられた。小池修は数原晋とアンサンブルラボの両翼をになう テナー奏者。 14. Rockin' In Rhythm 作曲:Duke Ellington, Irving Mills, Harry Dedrick 編曲:Duke Ellington デュークエリントンの代表作の一つ。軽快なスウィングナンバー。ウェザ ーリポートなどがカバーしており、最近は大西順子も取り上げている。今 回演奏するのはエリントンのオリジナルヴァージョンで55年発表のもの を採譜した。